出入国在留管理庁は2026年10月1日、「永住許可に関するガイドライン」を改定し1、永住許可に関するガイドライン「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」を新たに策定しました2。主な変更点は、次の8点です。
1.収入基準の明確化と引上げ
収入について、「世帯人数に応じた日本人世帯の平均収入を上回る水準に、継続して達していること」という基準が明示されました。単身者では年収444万円が基準となるなど、従来の事実上の目安である年収300万円程度から大幅に引き上げられました。諸外国には、永住許可に収入要件を設けていない国や、生活保護の基準を目安としている国もあるので、今回の基準は、非常に厳しい部類に入ると考えられます。
2.年金基準の新設
新たに年金に関する基準が設けられました。「日本人世帯の平均収入を上回る年収水準で30年間」厚生年金に加入した場合の受給年金額が、基準となります。不足する場合は、預貯金や株式などの金融資産が必要です。過去に「脱退一時金」を受給していると、審査で不利になる可能性があることなど、自治体の窓口でも十分な情報提供が求められます。
3.税金や社会保険料の納付状況を厳格に審査
税金、年金、健康保険料などを期限内に納付しているかが重視されます。転職時の保険切替えなどで手続や納付が遅れた場合も、審査で不利になる可能性があることなど、自治体の十分な周知が求められます。
4.日本語能力と日本の制度・ルールの理解を追加
B1相当以上の日本語能力に加え3、日本の制度や生活上のルールを理解していることも求められます。永住許可に言語要件を設けていない国も多いため、B1レベルという基準は、国際的に見ても厳しい部類に入ります。今後は、国の日本語・生活学習プログラムに加え、自治体による日本語講習や社会生活に関する講習を充実させる必要があります。
5.学齢期の子どもの就学を要件化
学齢期の子どもを就学させていることが、新たな要件となりました。しかし、文部科学省は、外国人の子どもの保護者について、日本の就学義務の対象ではないとの見解を示しています4。そのため、今回の要件との整合性が問題になります。外国人学校やインターナショナルスクールなど、学校教育法第1条に定める学校以外の教育施設に通っている場合でも56、不利に評価されないことをガイドラインに明記すべきです。
6.居住期間と出国期間の基準を厳格化
日本に10年間継続して居住することを原則とする点は、これまでと変わりません。ただし、10年という居住期間は、OECD諸国の中でも最長です7。また、申請時に必要な在留期間についても、従来は「3年」の在留期間で足りるとする実務がありましたが、今後は多くの在留資格で「5年」の在留期間が必要となります。
7.日本人・永住者・特別永住者の配偶者に対する特例を縮小
配偶者に関する特例の要件が引き上げられました。従来は「婚姻期間3年以上、かつ日本での居住期間1年以上」でしたが、改定後は「婚姻期間5年以上、かつ日本での居住期間3年以上」となります。
8.入管法上の義務違反や、税金・社会保険料の不払いによる永住資格の取消し
在留カードの携帯義務に継続的に違反したり、故意に税金や社会保険料を支払わない場合、永住資格を取り消すことが可能となります。新たな取消に関するガイドラインでは、たとえば、催告や滞納処分を受けても、納付する意思がない場合、脱税などで有罪判決を受けた場合、財産を隠すなど、徴収を妨げる不正行為があった場合、滞納額・期間・回数が、社会通念上見過ごせない程度に達している場合には、永住資格が取り消される可能性があります。
今回の改定では、永住許可の要件が全体として厳格化されています。特に、収入・年金基準を満たせないために、永住許可の申請を断念する外国人住民が増える可能性があります。2027年4月からはじまる育成就労→特定技能1号→特定技能2号→永住許可→帰化という日本に特徴的な5ゲートモデルの受入れも、永住許可が大きな関門となるでしょう。今回の改定には、永住者が生活保護を受給する可能性を抑えたいという意図があるように見えます。しかし、平均収入ではなく中央値を基準とする方法も考えられるなど、見直しが必要と思われます。自治体の窓口においても、日本に永住するかどうかをまだ決めていない入国時の段階で、将来の永住許可に必要となる条件を正確に伝えることが重要です。永住許可を検討する段階になって初めて、多くの不許可要因を知ることになれば、本人にとって大きな不利益となります。日本語講習や社会生活に関する講習の中で、収入、年金、税金、社会保険、日本語能力、子どもの就学などの条件を、早い段階から分かりやすく伝える仕組みが必要です。
- 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年10月1日改定)」https://www.moj.go.jp/isa/10_00279.html ↩︎
- 出入国在留管理庁「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン」https://www.moj.go.jp/isa/11_00118.html ↩︎
- 文化庁「「日本語教育の参照枠」の概要」https://www.bunka.go.jp/seisaku/kokugo_nihongo/kyoiku/chiikinihongokyoiku/r05_boshu/pdf/93841301_04.pdf ↩︎
- 文部科学省|小・中学校等への就学について | 就学事務Q&A 「13. 外国人の子等の就学に関する手続について」「Q 外国人の子の就学に関する手続について、どのような点に留意が必要でしょうか。」の問いに対して、A 我が国においては、外国人の子の保護者に対する就学義務はありませんが、公立の義務教育諸学校へ就学を希望する場合には、国際人権規約等も踏まえ、その子を日本人児童生徒と同様に無償で受け入れているところです。(以下略)と回答が掲載されている。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1422256.htm ↩︎
- 文部科学省|小・中学校等への就学について | 就学事務Q&A 「11. 学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合の就学義務について」「Q 学齢児童生徒をいわゆるインターナショナルスクールに通わせた場合、保護者は就学義務を履行したことになるのでしょうか。」の問いに対して「A(前略)一方、学校教育法第17条第1項、第2項には、学齢児童生徒の保護者にかかる就学義務について規定されています。そこでは保護者は子を「小学校、義務教育学校の前期課程又は特別支援学校の小学部」、「中学校、義務教育学校の後期課程、中等教育学校の前期課程又は特別支援学校の中学部」に就学させると規定されています。よって、保護者が日本国籍を有する子を一条校として認められていないインターナショナルスクールに就学させたとしても、法律で規定された就学義務を履行したことにはなりません。(後略)」と回答が掲載されている。https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/1422252.htm ↩︎
- e-GOV「学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)」https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000026 ↩︎
- 近藤敦「在留手続の手数料の引き上げと在留の公正な管理としての適正手続」名城法学76‐1(2026年)119-120頁https://law.meijo-u.ac.jp/staff/contents/76-1/760103_kondo.pdf ↩︎

近藤 敦
名城大学法学部教授
専門は憲法・国際人権法。MIPEX(移民統合政策指数)の日本における第一人者。出入国在留管理政策懇談会委員(2025年〜)。田村太郎氏と「多文化共生社会基本法」の共同提言を続けている。ストックホルム大学、オックスフォード大学、ハーバード大学への在外研究歴を持ち、欧米諸国との比較に詳しい。著書に『多文化共生と人権』(明石書店)ほか。最新論文「在留手続の手数料の引き上げと在留の公正な管理としての適正手続」名城法学76-1(2026年)。
※本コラムは著者個人の見解です。






















