2025年夏の参院選1以降、外国人政策をめぐる各党の提言競争が加速している。自民党は第二次提言を2026年(令和8年)6月12日に申し入れを行い2、日本維新の会は第三次提言を同年6月26日に提出し3、参政党は同年6月17日に参院へ法律案を提出した4。メディアでは「外国人比率の上限を何%にするか」という議論が注目を集めている一方で、三党の提言を横断的に読むと、自治体行政に直接影響しうる変化が4つ浮かぶ。いずれも「どこへ権限・役割を移すか」という問いに直結する。本稿ではその点に着目して提言内容を見ていきたい。
【三党提言の主要論点比較】(編集部作成)
| 論点 | 自民党 | 日本維新の会 | 参政党 |
|---|---|---|---|
| 社会統合プログラム | 考慮要素として段階的導入(2027年度(令和9年度)試行) | 未受講・未達成で在留審査時に消極的評価 | 義務化(在留要件化) |
| 不法滞在情報の連携 | マイナンバー活用による入管庁との情報連携推進 | 不法滞在が疑われる場合の入管庁への情報提供を円滑化 | 積極的な取締り・情報共有の強化 |
| 外国人の子どもの就学 | 就学支援・把握と勧奨の徹底 | 保護者の責務の明確化・在留更新時の考慮 | 就学義務化(日本人と同等) |
| 自治体への財政支援 | 財政支援の強化を求める | 交付金の大幅拡充+客観指標による重点配分 | 詳細な言及なし |
| 外国人比率の量的管理 | 公式提言文書では具体的な数値・上限の明示なし | 公式提言文書では具体的な数値・上限の明示なし | 公式提言文書では具体的な数値・上限の明示なし |
| 外国人政策の指揮体制 | 出入国在留管理庁の機能強化・関係省庁との連携推進 | 入管庁の機能強化(DX・情報連携を軸に) | 内閣府外局「外国人総合政策庁」を新設・特命担当大臣が一元管理(法律案) |
(出典)本表は以下の公表資料を基に編集部が作成しました。
自民党:外国人政策本部「外国人政策本部 提言」(令和8年1月20日)5/「外国人政策本部第二次提言(概要)」(令和8年6月9日)6
日本維新の会:外国人政策と人口戦略調査会「外国人政策の総点検と今後の方針に関する提言」(令和8年6月25日)7
参政党:「外国人PT提言【最終版】ver16」(令和7年12月17日発表)8/「外国人総合政策庁の設置等による外国人政策の総合的な推進に関する法律案」(第221回参議院第九号)9。参政党欄のうち「外国人政策の指揮体制」行は法律案に基づく。その他の行はPT提言(ver16)の内容を整理したもの。
〔参考〕参政党の法律案について
参政党は令和7年12月発表のPT提言(ver16)に加え、同年中に参院へ「外国人総合政策庁の設置等による外国人政策の総合的な推進に関する法律案」(第221回参議院第九号)を提出している。同法律案は全8条の機構設置法であり、施策の具体的内容はPT提言に委ねられているため、社会統合プログラムの要件・財政支援の規模等は法律案単体には規定されていない。
法律案の骨格は次のとおりだ。内閣府の外局として「外国人総合政策庁」を新設し(第2条、施行後2年以内)、特命担当大臣のもとで外国人政策の総合調整を一元的に担わせる(第4条)。同庁の事務として、在留外国人数に関する指標を含む基本方針の策定・定期的見直しが法定されており(第3条二)、量的管理を政府の正式な責務として位置づける点が他党との構造的な違いとなっている。地方公共団体に対しては「情報提供、助言その他の支援」を行う旨が規定されているが(第8条)、財政的な手当ての具体化は今後の政令・予算に委ねられる形となっている。
社会統合プログラムの「在留資格要件化」――「教える側」と「評価する側」の同居
三党ともに、在留外国人に日本語教育・社会統合プログラムを課すべきという方向では一致している。ただしその強度は大きく異なる。
自民党は2027年度(令和9年度)の試行運用を目標に日本語・生活学習プログラムの創設を求め、受講を在留資格の「考慮要素」にとどめる段階的アプローチをとる。日本維新の会はさらに踏み込み、「就労等を目的として中長期にわたり在留しながら、プログラムを受講せず、または一定水準の理解に至らない場合に、在留資格の審査時においてその状況を消極的に評価する仕組みを整備すべき」と提言する。参政党はさらに強く、日本語教育・日本文化理解の「義務化」(在留要件化)を求める。
強度によっては社会統合プログラムの実施主体として自治体・NPOが関与する場合、受講状況の記録・確認・報告が求められる可能性がある。「日本語を教える支援の場」が同時に「在留要件を満たしているか確認する場」になることにより、プログラムを受けるべき外国人住民が評価が下がることを恐れて参加に応じないなど、信頼関係の構築が難しくなるリスクがある。支援者が評価者を兼ねるという構造が、支援の実効性そのものを損なう可能性については、検討が十分とは言えない。
「希望する者が入国前からオンラインで受講できる環境を整備し、来日前からの社会統合を促進すべき」(維新提言)という視点は現実的な一歩だが、プログラムの実施主体・費用負担・評価基準の設計は、今後の制度設計にかかっている。
不法滞在情報の入管庁への提供――住民窓口に「通報機能」は馴染むか
在留管理のDX化と情報連携強化は三党に共通する方向性だが、自治体の役割という点で最も具体的な変化をもたらすのが、自治体窓口と入管庁の情報連携だ。
自民党は「マイナンバーを活用した入管庁と関係機関との情報連携を2027年(令和9年)3月以降着実に推進する」と求め、維新の会は「不法滞在が疑われる場合に入管庁への情報提供が円滑に行われる運用を確保すべき」と提言する。
現行制度でも、適法に入国した後に在留期間を超過するなどして不法滞在に転じた者の捕捉は課題として残っており、自治体窓口がこの実態把握の結節点として機能することが期待されている。
問題は、住民票・在留カードを扱う窓口が「情報提供の円滑化」の担い手として位置づけられることで、外国人住民がその窓口に近づきにくくなる可能性だ。健康保険の加入手続き、子どもの就学申請、生活相談――こうした場面で自治体窓口を頼ってきた外国人住民が、「通報されるかもしれない」と感じて足を遠ざければ、むしろ実態把握は困難になる。支援と管理を同じ窓口で担うことの矛盾は、茨城県の「不法就労通報報奨金制度」が示したのと同種の問い10を、より広範な形で自治体に突きつけている。管理の強化がかえって不法滞在者を増やすことにならないための丁寧な設計が必要だ。
子どもの教育――就学「義務化」は自治体業務をどう変えるか
外国人の子どもの教育についても、三党の提言は段差をもって並んでいる。
現行制度上、外国人の保護者は就学義務の対象とされておらず、就学は本人・保護者の意思に委ねられている。文部科学省「外国人の子供の就学状況等調査(令和6年度)」では、就学状況が不明とされた外国人の子どもが全国で約8,400人にのぼることが報告されている。11
この問題への応答として、参政党は就学の義務化(外国人の子どもにも日本人と同様の就学義務を適用)を求める。維新の会は保護者の「責務の明確化」として、就学させる責務を法的に明確にした上で就学案内・勧奨を徹底すること、および保護者の在留資格の更新等に当たって子どもの就学・教育への対応を考慮する仕組みを求める。自民党は就学支援・教育環境整備を中心に、まず把握と勧奨を徹底する立場だ。
自治体――とりわけ教育委員会――にとって、義務化と責務明確化は異なる業務負担をもたらす。義務化は違反時の対応を含む法的枠組みを必要とし、責務明確化は在留資格更新と就学状況の情報連携という新たな仕組みを要する。いずれの方向に進んでも、住民登録と就学状況を突合して把握し、保護者への働きかけを行う仕組みが求められることは共通している。
維新提言が「外国人の子供の就学状況を住民登録等と連携して的確に把握し」とするように、この課題は教育委員会だけの問題ではなく、市町村長部局の住民基本台帳を管理する部署との連携を必要とする横断的な行政課題だ。
自治体への財政支援――現場の実態に即すか
三党提言の中で、自治体が最も直接的に恩恵を期待できる論点が財政支援だ。
外国人の受入れに伴う行政コストは最終的に地方自治体が負担することとなるが、全国市長会による「外国人受入環境整備交付金に関する緊急提言」(令和7年1月20日)12などを見ても、現行の「外国人受入環境整備交付金」の規模は自治体の実際のニーズに比して極めて不十分とされてきた。集住地域を抱える自治体は、日本語教育、行政サービスの多言語化、相談体制の整備、生活ルールの周知、住民との摩擦への対応等に追われ、財政的にも人的にも限界に達しているところが少なくない。
維新の会はこの点を最も具体的に取り上げ、「外国人受入環境整備交付金の大幅な拡充を含め、集住地域を抱える自治体が必要とする予算規模に見合う財政措置を講じるべき」とした上で、「交付金の配分基準について、外国人比率や集住度合い等の客観指標を反映した重点配分の仕組みを導入すべき」と提言する。自民党も財政支援の強化を求めているが、重点配分の指標設計という踏み込んだ提案は維新の会に特徴的だ。参政党の提言には詳細な言及が見られない。
「重点配分」の指標をどう設計するかは、実は重要な問題をはらんでいる。「外国人比率」が市区町村単位で算出される場合、集住実態のある地区を内包しつつも全体比率が低い市区町村は支援を受けにくくなる可能性がある。施策の管理単位と、課題が実際に発生する単位(学校区・町丁目)のズレは、財政配分においても同様に生じる。
比較から見える「支援」から「管理」への流れ
ここまでの提言比較から見えるのは、外国人住民への行政関与の重心が「サービスの提供(福祉・教育・生活支援)」から「適法性の確認と管理」へと移るということだ。
社会統合プログラムの在留要件化は、支援の場に評価機能を持ち込む。不法滞在情報の連携強化は、住民窓口に通報的機能を期待する。就学状況の在留更新への反映は、教育支援の場を滞在管理と結びつける。いずれも、自治体が外国人住民と構築してきた「困ったら相談できる場所」という信頼関係を揺るがしかねない。
自治体が外国人住民との信頼関係を失ったとき、何が起きるか。社会保険の未加入問題は深刻化し、子どもの不就学は把握できなくなり、生活上のトラブルは行政に届かないまま地域摩擦として潜在化することにならないか。「管理の強化」が意図せず「実態把握の困難化」を招くという逆説は、各党の提言文書に十分には書かれていない。
三党のうち自民党が「我が国の経済社会を支え、真摯に就労・事業を営む外国人人材まで意図せず排除する事態を招いてはならない」と釘を刺し、維新の会が「運用の厳格化に当たっては、制度を悪用する者を的確に排除する一方で……(中略)……真摯に活動する企業・人材が活動しやすい環境の整備とを両立させる運用が求められる」と述べているのは、こうした逆説への意識があるからだろう。しかし両立の具体的な方法論は、各党の提言において不明瞭なままだ。
おわりに
三党いずれの提言にも「社会統合」「外国人との共生」という言葉が登場する。しかしその内実をつくるのは国の法律ではなく、住民と日々向き合う自治体の現場だ。
あらためて今回の比較を踏まえて以下の3点が議論として残ると編集部は考える。
一つ目は、支援と管理を同じ窓口で担えるか。在留管理の強化と社会統合支援は、実施主体が共通する限り、外国人住民との関係性に緊張をもたらす。役割の分離を行うなどの有効な方策があるか、十分な検討が必要だ。
二つ目は、財政措置は本当に現場の実態に即すか。現場が必要とする規模・タイミング・使途とならなければ、自治体現場で新たな問題を生む。交付金の設計に自治体の実態を反映させる機会が必要だ。
三つ目は、「いる人への対応」を誰が語るか。国レベルの議論が「何人まで受け入れるか」に集中するほど、「すでにここにいる人々とどう地域をつくるか」という問いは後景に退く。その問いを発信し続けられるのは、現場にいる自治体だけだ。
編集部では今後、全国市長会や全国知事会の動きにも注目し、取材を続けていく。
なお、冒頭の比較表にも示したとおり、メディア等では「外国人比率○%上限」という数値が繰り返し報じられているが、三党いずれの正式な提言文書にも、在住外国人比率の具体的な上限数値は明記されていない。こうした数値が議論として浮上している背景には、一部の党首・党幹部が選挙後の発言や集会等で数値に言及したことがあるが、各党の政策決定文書としての位置づけを持つものではなく、今後の立法・制度設計の中で具体化されていく性格のものである。自治体として政策動向を注視する際には、正式文書の水準と発言・報道の水準を区別して読み取ることが重要だ。(編集部)
本稿は各党の公表資料・公開情報を基に編集部が作成した分析記事です。各党の提言文書の文言は原文の趣旨に基づいて引用・要約したものであり、政策の優劣を評価するものではありません。
- 参議院「第27回参議院議員通常選挙」(2025年7月3日公示、7月20日執行)https://www.sangiin.go.jp/japanese/gianjoho/old_gaiyo/218/2181000.pdf ↩︎
- 自民党「外国人政策本部が第2次提言を申し入れ」(2026年6月12日)https://www.jimin.jp/news/policy/213483.html ↩︎
- 日本維新の会「外国人政策の総点検と今後の方針に関する提言と骨太の方針2026に向けたとりまとめを平口洋法務大臣に提出しました」(2026年6月26日)https://o-ishin.jp/news/2026/06/26/18425.html ↩︎
- 参議院・議案審議情報「
外国人総合政策庁の設置等による外国人政策の総合的な推進に関する法律案」(提出日
2026年6月17日)https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/221/meisai/m221100221009.htm ↩︎ - 自民党「外国人政策本部 提言」概要(2026年1月20日)https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/外国人政策本部%20提言.pdf ↩︎
- 自民党「外国人政策本部 第2次提言」概要(2026年6月9日)https://storage2.jimin.jp/pdf/news/policy/213483_1.pdf ↩︎
- 日本維新の会「外国人政策の総点検と今後の方針に関する提言」(2026年6月25日)https://o-ishin.jp/news/2026/images/5294ea0cd1a94000aa24548387a1af82bbf03339.pdf ↩︎
- 参政党「外国⼈問題に対する政策提⾔」(2025年12月17日)https://sanseito.jp/news/n6436/ ↩︎
- 「外国人総合政策庁の設置等による外国人政策の総合的な推進に関する法律案」(第221回参議院第九号)https://www.shugiin.go.jp/Internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g22106009.htm ↩︎
- brIDge:視点「自治体は「通報の受け皿」になるべきか 茨城県「不法就労通報報奨金制度」の論点」(2026年05月16日)https://bridgejapan.net/284/ ↩︎
- 文部科学省「「外国人の子供の就学状況等調査(令和6年度)」」(2025年10月2日)https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/31/09/1421568_00005.htm ↩︎
- 全国市長会「外国人受入環境整備交付金に関する緊急提言を出入国在留管理庁に提出」(2025年1月20日)https://www.mayors.or.jp/p_opinion/o_teigen/2025/01/250120gaikokujin-teigen.php ↩︎





















