広島出入国在留管理局取材
取材実施:2026年7月17日
外国人住民との共生が地域課題の最前線に浮上するなか、「そもそも在留資格って何種類あるの?」「この方はアルバイトできる?」といった基本的な問いに、自信をもって答えられる自治体職員はどれほどいるだろうか。窓口対応、協力隊採用、農業担い手確保――場面は違っても、在留制度を正確に理解しているかどうかが、対応の質を大きく左右する。
brIDge編集部は広島出入国在留管理局(広島市中区)を取材し、現場職員への日常的な相談対応にあたる担当者に話を聞いた。今回はその内容をもとに、自治体職員に特に知っておいてほしい制度の基礎を整理する。
在留資格とは何か――種類と「就労可否」の基本
現在、日本の在留資格は全部で29種類ある。大きく「就労できる資格(活動内容が定められている)」「就労できない資格(活動制限のある資格)」「活動制限のない資格」の3区分で理解するとわかりやすい。
【表1: 3区分の概要】
| 区分 | 種類数 | 主な例 |
|---|---|---|
| 就労可能な在留資格 | 23種類(うち次段の4種類は活動制限なし) | 技術・人文知識・国際業務、特定技能、経営・管理、技能 など |
| 活動制限のない在留資格 | (4種類) | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
| 就労不可の在留資格 | 5種類 | 短期滞在、留学、文化活動、家族滞在、研修 |
※「特定活動」の就労可否は、個々に指定される活動による。
出典:広島出入国在留管理局への取材をもとに編集部作成
活動制限のない4種類(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)と特別永住者については、日本人と同様にどのような職業にも従事でき、入管への報告義務もない。一方、就労資格をもっていても、それぞれの資格ごとに「できる活動」が定められており、その範囲を超えた仕事はできない点に注意が必要だ。
就労可否の見分け方
実務上の最初のポイントは、在留カードの確認だ。就労ができない場合、在留カードの表面に「就労不可」と明記されている。
ただし、留学生や家族滞在者など本来は就労不可の方も、入管から「資格外活動許可」を得ている場合は、在留カードの裏面にスタンプが押されており、原則として週28時間以内のアルバイトが認められる。一方、技術・人文知識・国際業務や特定技能などの就労資格をもつ方は、その資格の活動範囲内での雇用契約に基づく就労が前提であり、他でのアルバイトは基本的にできない。
■ 在留カード確認の実務チェックポイント
- 在留カード表面に「就労不可」の記載があれば就労不可
- 裏面に「資格外活動許可」スタンプがあれば週28時間以内のアルバイト可
- 就労資格者でも、資格ごとに活動内容が限定されている
- 活動制限のない4種類(永住者等)は制限なし・報告不要
自治体が外国人を採用するとき確認すべきこと
外国人を自治体職員として採用する場合、もっとも一般的な在留資格は「技術・人文知識・国際業務」だ。通訳・翻訳業務、国際窓口担当、専門的な技術職などがこれに該当する。一部の都道府県で一般行政職への外国籍採用が広がりつつあるが、どの在留資格になるかは職種・業務内容によって異なる。
採用にあたって雇用主側に求められる対応は少なくない。
在留資格変更と雇用主のサポート義務
たとえば留学生がフルタイムの職に就く場合は、在留資格の変更申請が必要となる。この際、本人だけでなく採用側(自治体)も申請書類の一部を記入・準備する義務がある。具体的には、雇用条件が分かる書類(労働条件通知書等)や法定調書合計表などが求められる。なお、自治体はカテゴリー1に分類されるため、提出不要となる書類も多い。
在留期限や資格内容の確認は、採用後も雇用主の責任の一部だ。在留期限が切れた方は就労できなくなるため、更新・変更の手続きが完了した際には必ず新しいカードの内容と在留期限を確認する習慣をつけることが重要だ。
また、特定技能一号の方を受け入れる場合は、雇用主(受入機関)が支援計画を策定し、行政手続きへの同行支援や生活オリエンテーションの実施などが義務づけられている。「採用した後は本人任せ」では済まない点は、特に覚えておきたい。
【実務ポイント】採用側が準備する書類(主なもの)
雇用条件通知書 / 在職証明書・労働契約書 / 法定調書合計表 / 登記事項証明書(法人の場合)等。資格の種類・ケースによって異なるため、事前に入管への確認が望ましい。
地域おこし協力隊と在留資格
近年、外国人を地域おこし協力隊として採用する自治体が増えている。この場合に多くの担当者が誤解しているのが、「協力隊だから在留資格はこれ」という思い込みだ。
担当者は明確に述べた。「地域おこし協力隊だから、この在留資格、というものはない。活動内容によって適用される在留資格が決まる」。
活動内容が在留資格を決める
実際に多いケースを整理すると次のようになる。
- 通訳・翻訳業務を担う場合 → 「技術・人文知識・国際業務」
- 農業・林業に専従する場合 → 「技能実習(育成就労)」または「特定技能」
- スポーツ指導者(実務経験が十分ある専門家)→「技能」の可能性あり(要件厳格)
注意すべきは、特定技能や技能実習(育成就労)の制度は、地域おこし協力隊の枠組みとは基本的に相性が悪い点だ。これらの資格は分野ごとの要件と指定機関による支援が前提であり、協力隊の地域主体の業務委託とは構造が異なる。「外国人に農業をしてもらいたいから協力隊で招く」という発想で進めると、適切な在留資格の付与ができないケースが出てくる。
また、協力隊には3年間の任期があるが、任期終了後に起業・独立する場合は「経営・管理」の在留資格が必要となり、資本金など別の要件(2024年から一部変更あり)を満たす必要がある。農業で独立し農地を取得・賃借する場合も、就農の形態によって在留資格が変わりうるため、任期前から入管に相談しておくことが望ましい。
■「技能」資格の該当例(主なもの)
- 外国料理の調理師(一定の実務経験が必要)
- スポーツの専門指導者(一定の実務経験又は国際的な競技会への出場経験が必要)
- 航空機の操縦士
- 貴金属・装飾品等の加工職人
※「技能」は名称ほど幅広くない。業務内容と実務経験要件の両方を確認することが不可欠。
特定技能・育成就労――地域産業を支える制度の基礎
農業・水産業・建設・介護・外食など、地域の基幹産業を支える外国人材の受け入れ制度として、「特定技能」と2027年4月施行予定の「育成就労」がある。この2制度は地方自治体が最も関わることの多い制度といっても過言ではないが、その内容や違いを正確に理解している職員はまだ少ないのでは。
特定技能一号・二号の違い
| 項目 | 特定技能一号 | 特定技能二号 |
|---|---|---|
| 技能レベル | 一定の技能・日本語能力 | 熟練した技能(より高度な試験) |
| 在留期間の上限 | 通算5年 | 上限なし(更新継続可) |
| 家族帯同 | 原則不可 | 可能(家族滞在として) |
| 永住への道 | 二号への移行が前提 | 要件を満たせば永住申請可 |
| 支援義務 | 受入機関に支援計画が必須 | 緩和あり |
出典:広島出入国在留管理局への取材をもとに編集部作成
特定技能一号と二号の最大の違いは「在留期間の上限」と「家族帯同の可否」だ。一号は通算5年が上限で、家族を本国から呼び寄せることができない。二号は更新を重ねれば長期滞在が可能で、配偶者や子を家族滞在として帯同でき、永住申請の道も開ける。地域に定住・定着してもらうことを考えるならば、二号以降のキャリアパスを見据えた受け入れ設計が重要になる。
特定技能の各分野の詳細な要件(試験内容、受入枠、停止・再開等)は、分野を所管する省庁(農業・外食は農林水産省、建設・造船は国土交通省など)がそれぞれ決定している。入管は審査主体だが、分野の制度設計自体は各省庁の管轄であるため、情報収集の際は省庁別に確認する必要がある。実際に、外食業分野の特定技能一号の新規受入が一時停止となったケースでは、農林水産省のウェブページで情報が告知された。
育成就労制度の何が変わったのか
技能実習制度は「技術移転を通じた国際貢献」を目的としてきた。実習生は日本で技術・知識を習得し、本国に持ち帰ることを前提としていた。しかし現実には長期就労者の受け皿となっており、制度の目的と実態のかい離が問題視されてきた。
2027年4月1日の施行に向けて準備が進む育成就労制度は、この構造を大きく転換した。目的を「人材育成と日本の人手不足解消」に明確に位置づけ直し、育成就労(最長3年)→特定技能一号→特定技能二号→永住というキャリアパスを制度として整備した。
日本語能力については、就労開始までにN5相当の能力が求められ、育成就労期間中も段階に応じた日本語講習(一定時間数が義務化)が課される。加えて、入国後には日本での生活ルールを学ぶ「生活オリエンテーション」も必須とされている。電気・水道・ガスの契約、行政手続きの支援なども受入機関の支援義務に含まれており、「来てもらったら後は自分で」という対応は許されない。
【技能実習 vs 育成就労:最大の違い】
技能実習では、本人の希望による転籍(転職)は原則認められなかった。育成就労では、同一分野内に限るものの、一定期間・要件を満たせば本人希望での転籍が可能になった。これは制度の根幹にかかわる変化であり、支援機関や受入機関の役割も変化している。
自治体窓口でよくある誤解と正しい理解
一般に報道で用いられる用語に対して誤解をしている方も多い。ここでは編集部で多く聞く誤解について聞いた。日常的な窓口対応の精度を上げるために、ここで整理しておきたい。
誤解① 「不法滞在」と「オーバーステイ」は同じ意味だと思っていた
オーバーステイ(不法残留)は「在留期限を超えて日本に滞在している状態」を指す。一方、不法滞在はより広い概念だ。不法入国(偽造パスポートの使用、不法上陸等)による滞在、在留資格の範囲を超えた就労を続けている状態、刑罰を受けた場合なども不法滞在に含まれる。
報道では両者が混同されやすいが、「不法滞在」を一括りに語ることで、実態が見えにくくなる場合もある。制度の理解として、「オーバーステイ(不法残留)は不法滞在の一形態である」と覚えておきたい。
誤解② 「仮放免」になったら、在留が認められたのだと思っていた
仮放免は、退去強制手続き中の方が一時的に施設外での生活を認められた状態のことだ。在留資格を付与されたわけでも、手続きが終了したわけでもない。引き続き退去強制の手続きは継続しており、期日を定めて出頭を求められる。
「仮放免になったからもう問題ない」「何か在留資格を取れたのでは」という誤解が窓口対応にも混入しがちだ。仮放免者は正規在留者ではないという点は、自治体職員として明確に理解しておく必要がある。
誤解③ SNSやコミュニティで「この在留資格は取れない」と聞いた
外国人コミュニティ内で広がる情報の中には、正確でないものが含まれていることがある。「もう申請は無理だと言われた」という相談が入管に来ることもあるというが、実際に手続きを確認すると全く問題なかったという例も少なくないそうだ。
自治体の窓口でそうした相談を受けた際には、入管への相談を促すことが最善だ。「入管は怖いところ」というイメージが根強く残っているが、行政相談として対応しており、確認できる範囲で丁寧に答えてもらえる。税務署と同様に許認可機関ではあるが、一般相談を受け付けている窓口として積極的に案内してほしい。
誤解④ 地域おこし協力隊として採用すれば在留資格は「技術・人文知識・国際業務」になる
前述のとおり、協力隊という採用形態が在留資格を決めるわけではない。業務内容に応じた在留資格が必要であり、場合によっては適切な在留資格が存在しないケースもある。「協力隊で採用したいから在留資格はこれ」という思い込みで進めると、後から資格不整合が発生しかねない。事前に業務内容を整理した上で入管に相談するプロセスを踏むことが重要だ。
おわりに――「わからなければ、まず入管に相談を」
在留資格の制度は、種類が多く、改正も頻繁で、分野ごとに所管省庁が異なるなど、専任担当者でない自治体職員には把握しきれない複雑さを持っている。今回の取材を通じてあらためて感じたのは、制度の複雑さを「わからないまま放置する」ことが最大のリスクだということだ。
担当者は取材の最後にこう語った。「わからないことは、気軽に入管に相談してください。怒られることはありません。在留期限が切れてからでは選択肢が狭まります。早めにご連絡いただくことが、お互いにとってよい結果につながります」。
外国人住民との共生を本気で進めるためには、窓口の職員一人ひとりが制度の基礎を理解し、「つなぐ力」を持つことが欠かせない。本記事が、その第一歩の手がかりになれば幸いだ。(編集部)
※本記事は広島出入国在留管理局の担当者への取材をもとに編集部がまとめたものです。公開前に取材先の確認を経ています。在留資格の審査は個別の事情によって異なりますので、具体的な事案については各地方出入国在留管理局にご相談ください。





















