日本で増える「特定活動」の在留者――ミャンマー人の保護と学びの未来をどう支えるか

2021年2月1日にミャンマーにおいて国軍によるクーデターが発生したことを受け、日本政府は2021年5月に日本国内に滞在し、安全に帰国できないミャンマー人に対し、一定の条件の下で在留と就労を認める緊急避難措置を導入した1。これは、人々の生活と安全を支える重要な人道的対応であった。この保護を維持することは、引き続き優先されなければならない。同時に、この措置への依存が、学びを続け、将来のキャリアを築こうとする意欲を弱めていないか、検討する必要がある。

在留資格「特定活動」を持つミャンマー人は、2023年の1万5,983人から2025年には3万6,113人へと、126%増加した。2025年には、日本全体の「特定活動」在留者の約29%を占めている23。ただし、「特定活動」には複数の指定内容が含まれるため、この総数だけでは、人道的保護の対象者数や不適切な利用の規模を判断できない。

政府はすでに、技能実習における問題を認識している。2024年10月には、緊急避難措置の不適切な利用を理由に、技能実習を修了する前に在留資格の変更を希望するミャンマー人実習生への運用を見直した4。就労可能な在留期間1年の「特定活動」への変更は、本人の責任によらず実習の継続が困難となり、転籍先の確保に向けた調整を行っても新たな実習先が見つからない場合などに限定された。これは対象を絞った見直しであり、人道的保護を一律に撤回するものではない。

留学生、とりわけ日本語学校に通う学生の動向にも目を向ける必要がある。筆者が2025年に実施した現地調査では、元技能実習生に加え、日本語学校や専門学校の出身者にも「特定活動」の申請者がいた。学歴や職歴だけで、保護の必要性を判断することはできない。それでも、この緊急避難措置が卒業後の進路選択にどのような影響を与えているのかは、重要な検討課題である。

日本語学校の学生には、大学や専門学校に進学する道や、「特定技能」を含む就労に適した在留資格の要件を満たして就職する道がある。これらの進路では、継続的な日本語学習に加え、進路に応じた試験への合格や資格の取得が求められる。その過程で身につける能力は、将来の所得向上やキャリアアップの基盤となり得る。

一方、学生が「特定活動」を、より容易に日本に残って働ける選択肢と捉えれば、進学を先送りしたり、資格取得のための学習にかける時間や費用を減らしたりする可能性がある。緊急時の安全網が「近道」として受け止められ、若者が在留期間の更新を繰り返しながら、昇給やキャリアアップの機会が乏しい仕事にとどまるおそれもある。ただし、これは検証を要する懸念であり、政策の効果として実証されたものではない。適法な在留資格の変更そのものが、不適切な利用の証拠になるわけではない。

学生がその進路を選ぶ理由を理解することも欠かせない。学費をかけて進学しても、卒業後の仕事とアルバイトとの収入差が小さいと見込まれるなら、認められた範囲でアルバイトを続ける方が魅力的に映る場合がある。学費に加え、進学中に得られなくなる収入を考えれば、すぐに働くことが現実的な選択となり得る。日本の2025年平均の消費者物価指数は前年比3.2%上昇し5、家計への負担を強めた。借入金の返済、家族を支える責任、将来の就職やキャリアへの不安も、こうした判断に影響している可能性がある。

入管当局と教育機関は、こうした背景を調べるべきである。手取り収入、認められる労働時間、社会保険や福利厚生、将来の昇給を比較すれば、通常の進学・就職ルートが、学生にとって十分な経済的見返りを持つかどうかを把握できる。在留資格変更前の状況と、その後の進学・就業実態に関するデータを充実させることも、保護の必要性と進路形成を妨げる要因を、それぞれ適切に捉えるために役立つ。

日本は、学びの継続や技能を生かした就労を、より実現しやすい選択肢にする必要がある。教育機関には、費用負担を抑えて学べる機会と、信頼できる進路・就職支援が求められる。企業は、資格や経験が賃金にどう反映されるのかを明確にし、見通しの立つ昇給の仕組みを整えるべきである。賃金政策も、生活費の上昇に対応し、購買力を支えるものでなければならない。ただし、最低賃金の引上げだけでは、進学に見合う経済的見返りを十分に確保できるとは限らない。

同時に、行政は「特定活動」の指定内容ごとに対象要件と更新基準を明確にし、不適切な利用が疑われる場合には個別に判断すべきである。保護の必要性は、学業成績や収入とは切り離して評価しなければならない。経済的困窮、職場での虐待や権利侵害、帰国した場合に直面する危険は、判断において重視すべき事情である。安全に帰国できない学生には、学業上の成果を保護の条件とすることなく、将来の可能性を広げる支援を提供する必要がある。

日本の緊急避難措置は、予測し難い政治危機に直面した人々を支えてきた。これを持続させるには、制度の適正な運用と、若い移住者の将来への影響の双方に目を向ける必要がある。目指すべきは、安全を保障しながら、学びやキャリア形成への努力が報われる環境を整えることである。一時的な保護を、将来の選択肢を狭めるものではなく、広げるものにしていかなければならない。

  1. 出入国在留管理庁「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置」https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/10_00036.html ↩︎
  2. 出入国在中管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00040.html ↩︎
  3. 出入国在中管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html ↩︎
  4. 出入国在留管理庁「本国情勢を踏まえた在留ミャンマー人への緊急避難措置(令和6年10月改訂)」https://www.moj.go.jp/isa/content/001349360.pdf ↩︎
  5. 総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2025年(令和7年)平均 (2026年1月23日公表)」https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/nen/index-z.html ↩︎

Researcher Mi Moe Thuzar(ミー モー トウーザー)

橋本財団ソシエタス総合研究所 研究員

ミャンマー出身。専門は為替政策とマクロ経済。ヤンゴン経済大学教員として同国のマイクロファイナンスや女性の労働参加を調査。2019年に岡山大学へ留学し、2023年博士後期課程修了。2024年から橋本財団ソシエタス総合研究所研究員。

※本コラムは著者個人の見解です。