移民が増加することに対する不安の声が強まっている。その中で、移民が「日本の社会保障にただ乗りしているのではないか」という声を聞くことも珍しくない。しかしこれは、本当だろうか?ここでは、移民が社会保障を「ただ乗り」しているかどうか確認してみよう。
まず法律上、3か月を超える在留資格をもつ外国人は、日本国籍者と同様、健康保険や年金に加入する義務がある。日本は、1980年前後に国際人権規約や難民条約に批准・加入したが、これらは社会保障における「内外人平等」を定めている1。それゆえ日本も、これらの条約を締結するにあたって、それまで国籍条項があった国民健康保険(国保)や国民年金をはじめとする社会保障に関する法改正を行い、日本に暮らす外国人の受給資格を認めた。なお保険料や年金額は、日本人と同じ条件で定められている。一方、厚生年金や健康保険にはもともと国籍条項がなく、それ以前から日本人と外国人は同じ条件で加入している。つまり健康保険や年金で、外国人の「ただ乗り」が生じることはない。
では実際に、これらの国保や年金は外国人にどのように利用されているのだろうか。厚生労働省によると、国保における外国人の被保険者は全体の4.0%とされている2。同省が全国150の自治体で加入率を調査したところ、外国人の国保は63%で、日本人の93%より低い3。この点が、外国人の「ルール違反」を示すものとして槍玉に上がることがある。しかし医療費に占める外国人の割合も低い。具体的には、総医療費に占める外国人の割合は1.39%、高額療養費の該当件数に占める割合は1.04%、支給額に占める割合は1.21%とされている。ここから厚生労働省としても、「医療費や高額療養費制度において、外国人の割合が高いということはない」と明言している。
外国人の収納率が低い理由の一つとして、日本の健康保険制度が在日外国人に十分周知されていない可能性がある。同時に、収納率にくわえ、医療費も低いことの背景には、外国人は若い世代が多いという事実があると考えられる。同省によると、外国人国保加入者のうち53.0%が20〜39歳である。一方、日本人加入者は65〜74歳が45.6%を占める。また前述のように、外国人の被保険者は全体の4.0%だが、年齢階層別でみると、0〜19歳は5.3%、20〜39歳は14.4%、40〜64歳は3.3%、65〜74歳は0.6%を占める(表1参照)。外国人は、健康保険に「ただ乗り」どころか、制度の貴重な支え手になっているといえるだろう。
【表1: 国民健康保険加入者に占める年齢階層別外国人の割合】
| _ | 外国人 人数 | 外国人 割合(列%) | 日本人 人数 | 日本人 割合(列%) | 合計 | 世代に占める 外国人の割合 (行%) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 0-19歳 | 108,000 | 11.3 | 1,940,000 | 8.5 | 2,048,000 | 5.3 |
| 20-39歳 | 506,000 | 53.0 | 3,018,000 | 13.2 | 3,524,000 | 14.4 |
| 40-64歳 | 257,000 | 26.9 | 7,458,000 | 32.7 | 7,715,000 | 3.3 |
| 65-74歳 | 63,000 | 6.6 | 10,408,000 | 45.6 | 10,471,000 | 0.6 |
| 不明 | 20,000 | 2.1 | 0 | 0.0 | 20,000 | 100.0 |
| 合計 | 954,000 | 100 | 22,824,000 | 100 | 23,778,000 | 4.0 |
出典:厚生労働省「説明会資料」p. 2②「年齢階層別被保険者数」より作成
一方、生活保護については、外国人は、「身分に基づく在留資格」といわれる「特別永住者」「永住者」「定住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の資格をもつものしか適用が認められない(くわえてその適用も準用扱いであり、権利としては認められていない)。2025年末の統計で、在日外国人のうちこれらの資格をもつ者は約40%となっている4。つまり外国人の約60%は、生活保護の原資でもある税金を払っているにもかかわらず、その利用を認められていないのである。
以上からすると、移民による社会保障の「ただ乗り」が生じているとはいえない。むしろ若い世代が多いかれらは、社会保障制度の貴重な担い手である。また生活保護については、そのかなりの部分は、制度からあらかじめ排除されるという差別的な取り扱いを受けているのが現状である。
- 岩波書店「在日外国人 第三版 法の壁,心の溝」田中 宏 著(2013年5月21日)https://www.iwanami.co.jp/book/b226216.html ↩︎
- 厚生労働省「福岡大臣(当時)会見概要」(2025年7月15日(火)10:44~11:02・省内会見室)ただし調査対象となった150の自治体の自治体名や、それらがどのように選ばれたのかという選定プロセスは公表されていない。https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00833.h
tml ↩︎ - 厚生労働省 保険局 国民健康保険課「説明資料」https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001616165.pdf ↩︎
- 出入国在留管理庁「在留外国人数」(2025年12月末)によると、在留外国人数は約413万人、そのうち生活保護の準用が認められる外国人数は約165万人に限られる。|出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」https://www.moj.go.jp/isa/publications/press/13_00062.html ↩︎
髙谷 幸(たかや・さち)
東京大学大学院准教授
専門は社会学・移民研究。日本における外国人や非正規移民、移民女性、移民政策などを研究し、社会の境界線による排除や周縁化、人々の連帯のあり方を幅広く論じる。著書に『追放と抵抗のポリティクス』(ナカニシヤ出版)など。






























